虚構世界で朝食を

Breakfast at fiction world

ただいま、さようなら、青い春よ

 こんばんは、kazumaです。今回も三ヶ月ほど姿をくらましていました笑 皆さん、お元気でしたでしょうか? 三末の公募シーズンが終了し、このブログのタイムリミットも期限切れとなりました。

 この『虚構世界で朝食を』のブログは二〇一九年三月三十一日までに作家になることを目標として開始したものです。二年前は仕事さえも辞めて、公募だけに明け暮れようとしていました。ですが新人賞の壁は厚く、爪一つ引っ掻くことの出来ない堅い堅い岩でした。

 この二年間、自分の中で小説の位置づけが変化していくのを感じていました。オンライン、オフライン含め、小説に関わるひとたちと出会い、言葉をやり取りしていく中で、作家を目指すことの意味について、考えが変わってきたのだと思います。

 昔は生きることの前に書くことがあると思っていました。人生なんてどうでもよくて、言いたかったことを小説の中で言い切って、この世から、社会から、人間から、逃げさえすれば、それでよいのだと。でも、それが決してすべてではなかったことを、この二年間で出会ったひとたちに教えて貰ったような気がします。
 
 離れていったひともいたし、新たに知り合って言葉をやり取りしたひともいます。遠ざかっていったひともいたし、自分から遠ざけたこともありました。二年間のどこを切り取っても幸せな瞬間はただの一瞬間で、あとは塵芥かシャボンみたいにふっと消えていきました。でも、もし幸せな瞬間が、終わることのない千年王国みたいに続くのだとしたら、たぶん、書く事なんて何にも残っていなかったでしょう。書くことの前には生きることがあって、生きることは苦しみなしに逃れることは出来なかった。少なくとも、私の人生はそうでした。

 あなたの書く物語はつまらない、小説でさえない、何が言いたいのかよく分からない……、色んな人にそう言われました。そのとき書くことがすべてだった私にとってはつらい言葉でしたが、実際のところ出来上がった小説を見れば、それが真実だったのだろうと思います。

 二年で小説をものにしよう、作家になろう、そんな考えで掴めるほど、小説の海は、狭くも浅くもなかったです。はじめて書いた物語がそのままひとつの小説になっているような天才小説家でもなければ、小説の急所を短期間で把握して、数年も経たずにトントンとプロへの階段を飛び越えて上っていくような秀才でもありません。私に残された道は何年、何十年と掛かっても泥臭くぬかるんだ段をひとつひとつ昇っていく、それ以外の道はないのでした。そのためには、たった二年の時間では、到底足りなかったのです。

 まるで書くことはパンドラの函で、開ければ開けるほど、災厄が降りかかって来るかのように思えました。でも、その函は過去の自分が大事に大事に、胸の中に抱いていたものでした。もうその函は元に戻しようがないほどぐちゃぐちゃに壊れていて、それでも底にある「希望」を掴もうと、この函の海の中を喘ぐように息をしながら溺れていきました。何もかも放り投げようとしていたあの時の自分が、ペンとノートだけは馬鹿みたいに手放さずにぎゅっと掴んでいたものなので、いまさら抛る気になどびた一文もなれないのです。息が続かなくなるまで、この海の底に潜っていたい。七年経ってもまだ、これだという輝くような石は見つからないまま、現実の地上で息を吸っては、また虚構の水面下を潜っていく……。

 息が途絶えるまで、それを繰り返していたいのです。そして、同じように小説の海に潜る人がいるとすれば、探している石が違うものであっても、それぞれが見つけた石について、決してわかり合うことがなくとも、ずっと遠くで、ともに同じ道を歩んでいる人間がいることは伝えたい。その為に、このブログで伝えるのは開設した当初の目的にそぐわなくなったので、「虚構世界で朝食を」での更新は停止しようと思います。次の扉を開くためには、この扉を閉めなくてはならないから。ここは閉鎖という形ではなく、ひとりの作家志望者のログとして残しておきます。

 次のブログは、はてなブログではなく、独自ドメインを取得し、無期限に文筆活動をお伝えできるブログを開設しようと考えております。構想段階なので、実際のブログ開設まで、まだまだ時間は掛かりますが、開設の折には、こちらでもご報告いたしますので。

 私の青い春はここで終わってしまったみたいです。いまはもっと深い色が見たい。公園のベンチにひとりで寝そべって見た、七年前の青く昏い夜明けの色を。その色をいつまでも追いかけて、私は生きてきたのだと思います。

 

 ただいま、さようなら、青い春よ。

 

 kazuma

 

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