虚構世界で朝食を

Breakfast at fiction world

十二月の風が吹く

 こんばんは、kazumaです。十二月最初の更新となりますので、まずは先月の振り返りを。
 
 先月も十月と同様、様々なことが身の周りで起きました。主にネットでの人間関係の出来事でしたが、やってくる人もいれば、去って行く人もおられました。私自身に原因が多分にあったとは思いますが、自分なりに誠実に言葉のやり取りをしたつもりなので、去って行った方には申し訳ないですが、仕方のないことだったのだと思います。恐らくそれぞれが向いている方向性の違いが明らかにあって、言葉を交わしていく中でそれは感じていたので、遅かれ早かれどこかの地点で離れて行かざるを得なかったと思います。
 
 大変お世話になった方なので、いつかまたお話が出来ればな、と私としては思っているのですが、相手の方はそう思われていないようなので、ここが縁の切れ目なのかもしれません。言葉の向こうには人がいるということを今年教えてくださった方が居て、いまはその言葉を噛みしめているところです。私自身、頭をぶつけて間違わないと、間違いに気付けないようなとんまな人間なので、これからもこういうことはあるだろうなと思っています。今までも沢山あったので。でもそこを潜り抜ける中で少しずつ成長してきたようにも思いますし、手札のカードの選択肢をひとつひとつ広げてきたつもりです。また、去って行くひとばかりでは決してありませんでした。
 
 まだ自分のカードは場にも出せない状態ですが、死なない程度に生きていれば、いつかはその機会が巡ってくるのだということを馬鹿の一つ覚えのように信じています。純粋にひとりで突き進むだけで、物事が進む時期はもう終わったのだと思います、これからはしぶとく生きて、したたかに布石を打ち、いつか小説で本当の勝負を掛けられる瞬間の為に準備を行って、文学賞を虎視眈々と狙い続けていこうと思います。
 
 十一月で、というか今年で一番考え方が変わったのは小説に対する姿勢というか、小説をどのようなものに捉えるかということです。
 
 小説を書き始めた一番最初の頃、病棟の中で物語を書いていた頃は、私にとって小説が全てであって、他に信じられるものはありませんでした。拙い物語を書いていましたが、それ以外に自分が縋ることが出来るものはペンとノート以外になかったから。いまだって根本的にその考えまで変わってしまった訳ではないのですけれども、その一方で小説だけが人生の全てではないということも、何となくですがこの一年で感じてきたのだと思います。
 
 いまの現実の私の生活というものは小説を作ったり読むことだけで成り立っている訳ではなく、小説を読み書く以外にも、やらなくてはならないことというものは思っている以上にあって、そういう人間の生活に必要なことを通じて誰かと関わったり、物事を考えたりしていく訳で、小説のことだけを考えて生活するということは、ほんとうのところ自分の求めているところなのかと問うと、実はそうと言い切れないところがある――、ということに最近気が付きました。
 
 きっかけは、やっぱり小さいながらも夢の一つだった古本屋をはじめたからで、理想とは違う面も沢山あることが分かってきましたが、それでもこれを自分の生業のひとつとして長くやっていきたい気持ちが芽生えています。つまり単に小説家になりたいというのではなく、古本屋や本に関わる仕事を現実の生活の土台とした上で、作家になりたいという思いがあります。最後の局面では作家兼古書店の店主になっていたいのです。
 
 今年の五月末に仕事を辞めてから、ずっとひとりで黙々と小説を造ったり、古書店開店に向けて動いていましたが、ひとりでは面白くないというか、どうしようもなく行き詰まる部分があることは、仕事を辞めてからの半年間、厭と言うほどこの部屋の中で感じてきました。一方で、十月から始めた古本屋を通して現実に関わってくださった方が沢山おられましたし、実際にひとと会って話さなければ分からないことが山のようにあることを知ったように思います。
 
 全ての小説家が最初から小説家として生まれてくる訳ではなく(勿論、そういうひとだっているでしょうが)、殆どの人は小説家である前に人間であって、私は前述のような特別な生まれ方をした訳ではなく、ただの何処にでも居る作家志望のひとりなのだということを五年書き続けて理解したような気がします。でもそれが分かったとしても、書くことを止めるつもりなんか微塵もないし、プロを目指すということに何ら変わりはなく、それはそれとして生きていく為に、古本屋や本に関わる仕事を通して、しぶとく粘り強く生きていくのだということをいまは思っています。
 
 虚構だけでは息苦しいし、現実だけでは一寸つまらない。私は欲張りだから、その中間を目指します。虚構と現実を往ったり来たりしながら、【虚構として】小説を読み、書き、【現実として】本に関わる活動を通して、前に進んでいきたい。
 
 十二月は色々と考えている事があって、出来る限り動いていこうと思います。本当は十二月の予定も書くつもりでしたが、その前に書いておかなければならないことを書いたと思います。あと、ブログとTwitterのプロフィールから『虚構』の文字と『純文学』の文字を取り去りました。これも意思表明のひとつです。このブログは小説に関わるものなのでタイトルとしては残しますが。虚構だけに生きる文学書生ではないこと、純文学というジャンルに囚われず(私が書いてきたものは純文学とは決して呼べないと思います)、ほんとうに自分が書きたかったものに正直になって、またもう一度物語と向き合って、生きていこうと思います。
 
 十二月の風は遠くからやって来て、もっと遠くの場所へと導いてくれる。虚構と現実を繋ぐ不思議な入り口へ向かって。
 
kazuma
 

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